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ウゴービ(肥満治療薬)の処方条件とは?効果や保険適用について

ウゴービ(肥満治療薬)とは

ウゴービは、肥満症の適応治療薬として、日本で初めて厚生労働省に承認されました『GLP-1受容体作動薬』です。このGLP-1受容体作動薬に関して、本来は2型糖尿病の治療薬であり様々な種類の薬剤が存在していますが、主な作用として、膵臓に作用にインスリン分泌を促進し、血糖値を上昇させるグルカゴンを抑制することで血糖値を改善させたり、食欲を抑える作用を有しています。

ウゴービの有効成分は『セマグルチド』であり、2型糖尿病の治療ですでに保険適応となっている注射剤の『オゼンピック』や飲み薬の『リベルサス』も同じ有効成分の『セマグルチド』となっています。

なお、ウゴービは皮下への注射剤として使用される薬剤となっています。

ウゴービの発売(処方)はいつから?

ウゴービは厚生労働省に承認された後も薬価収載が長らく見送られておりましたが、2024年2月22日に満を持して発売されました。このウゴービの発売はアジア諸国では初めてのことであり、世界では第6か国目となります。

薬価収載とは

さまざまな薬(新薬やジェネリック医薬品含む)を、公定価格として厚生労働省が定めた薬の価格の一覧表である薬価基準に載せることであり、この薬価収載によって、それぞれの薬は健康保険の適応となります。

ウゴービの効果について

ウゴービを使用することで得られる具体的な効果に関してですが、大別すると次の2点に分けることが出来ます。

  1. 体重減少効果・・・GLP-1ダイエットとして
  2. 血糖減少効果・・・糖尿病の治療薬として

なお、日本でのウゴービの承認は、日本人585人を含む5085人の過体重または肥満の成人が参加した国際共同研究である『STEP臨床試験プログラム』の結果に基づいています。

ウゴービの体重減少効果

  ウゴービ1.7mg群  ウゴービ2.4㎎群 プラセボ
ベースライン体重 86.1±11.9kg(101例) 86.9±16.5㎏(199例) 90.2±15.1kg(101例)
投与68週時の体重 77.8±13.9kg(98例) 75.1±17.0kg(193例) 88.6±15.5kg(100例)
投与68週時までの体重変化率 -9.9±7.8%(98例) -13.4±8.6%(193例) -1.9±5.9%(100例)

  ※プラセボとは見た目や味は本物の薬と同じだが、薬効成分の入っていない『偽薬』のことです。薬を飲んでいるとの被験者の思い込みによるデータの変化を検証するために用います。

上記のデータからウゴービを一定期間使用することで、10㎏以上の体重減少が期待できることがわかります。

ウゴービのHbA1cおよび空腹時血糖の減少効果

  ウゴービ1.7mg群 ウゴービ2.4㎎群 プラセボ
HbA1c ベースライン(%) 6.4±1.1(101例) 6.4±1.2(199例) 6.4±1.1(101例)
投与68週時の変化量 -0.9±0.8(98例) -1.0±1.0(193例) 0.0±0.8(100例)
空腹時血糖値 ベースライン(mg/dL) 111.7±26.2(101例) 111.2±27.2(199例) 112.7±29.5(100例)
投与68週時の変化量 -18.3±21.9(97例) -19.3±22.6(192例) 1.7±26.1(98例)

※『HbA1c』は糖尿病の重症度を示す指標であり、一般的に6.5%以上で糖尿病と診断されます。

今回の臨床試験の被験者は、2型糖尿病を有する患者を対象としているためにベースラインのHbA1cが比較的高めとなっています。

上記のデータからウゴービの投与により得られるHbA1cの減少量はベースラインと比較して約-0.9~-1.0%であり、空腹時血糖値は-18.3~-19.3mg/dL減少していることが分かります。

ウゴービとマンジャロの比較

マンジャロ(成分名:チルゼパチド)は2型糖尿病の治療で認可されている第三世代のGLP-1受容体作動薬(正確にはGIP/GLP-1受容体作動薬)の一種であり、ウゴービと同様に血糖改善効果や体重減少効果を有します。

ウゴービとマンジャロの体重減少率に関して

ウゴービ2.4mg

対象:肥満症(BMI37.9)
期間:68週
プラセボ    -2.8%
ウゴービ2.4mg -15.6%(p<0.001)
N Eng J Med.18;384:989,2021 国際共同第III相試験(NN9536-4373試験)

マンジャロ
対象:肥満症(BMI38.0)
期間:72週
プラセボ     -3.1%
マンジャロ5mg -15.8%(p<0.001)
マンジャロ10㎎ -19.5%(p<0.001)
マンジャロ15mg -20.9%(p<0.001)
N Engl J Med.21;387(3):205-216,2022

上記のデータは、対象者や期間が異なる為に直接比較ではありませんが、抗肥満薬としてみた場合に、ウゴービ2.4㎎よりマンジャロ10-15mgの方が体重減少効果が高い可能性があると考えられます。

ウゴービとオゼンピックの比較

ウゴービもオゼンピックも主成分はどちらも同じ『セマグルチド』です。
しかし、ウゴービとオゼンピックは次の2点の違いがあります。

  1. ウゴービの適応疾患は『肥満症』であるのに対して、オゼンピックの適応疾患は『2型糖尿病』
  2. ウゴービの最大投与量は2.4mg/回であるのに対して、オゼンピックの最大投与量は1.0mg/回

ウゴービとオゼンピックの体重減少率に関して

ウゴービ vs オゼンピック
対象:2型糖尿病(BMI36.0)
期間:68週
プラセボ     -3.3%
オゼンピック1.0mg -7.2%
ウゴービ2.4mg     -9.9%
Lancet 2021; 397: 971–84  国際共同第III相試験(NN9536-4374試験)

ウゴービおよびオゼンピックの最大投与量で体重減少率を比較した場合は、ウゴービの方が減量効果が上と言えそうです。ただし、ウゴービとオゼンピックは主成分が同じセマグルチドなので当然の結果であるかもしれません。

ウゴービとリベルサスの比較

ウゴービもリベルサスも主成分はどちらも同じ『セマグルチド』です。
しかし、ウゴービとリベルサスは次の2点の違いがあります。

  1. ウゴービの適応疾患は『肥満症』であるのに対して、リベルサスの適応疾患は『2型糖尿病』
  2. ウゴービは週に1回皮下注射する注射薬ですが、リベルサスは1日1回早朝空腹時に内服する経口薬であり、両者は投与経路が全く異なる

ウゴービとリベルサスの体重減少率に関して

まず、ウゴービと同成分(セマグルチド)のオゼンピックとリベルサスとの体重減少率の比較に関して下記のデータがあります。

リベルサス vs オゼンピック
対象:2型糖尿病
期間:26週
プラセボ        -1.3%
リベルサス2.5㎎/日   -2.2%
リベルサス5mg/日    -2.9%
リベルサス10mg/日    -5.2%
リベルサス20mg/日 -6.5%
リベルサス40mg/日    -7.6%
オゼンピック1.0mg/週   -7.2%
JAMA. 2017 Oct 17;318(15):1460-1470

海外のデータですので、日本のリベルサスの容量(3mg or 7mg or 14mg)とは異なりますが、このデータからは『リベルサス20~40㎎/日がオゼンピック1.0㎎/週(注射)と体重減少効果は同等』であると推測されます。

先ほど、『ウゴービ vs オゼンピック』の項目にてそれぞれの最大投与量においては、ウゴービの方が減量効果が上と推測される事を述べました。

上述のデータのまとめとして、ウゴービ2.4mg/週(注射)、オゼンピック1.0mg/週(注射)、リベルサス14㎎/日(経口)のそれぞれの最大投与量においての体重減少効果として、私見としては下記と推測します。

まとめ

ウゴービ2.4mg/週(注射)>オゼンピック1.0mg/週(注射)>リベルサス14㎎/日(経口)

ウゴービの処方条件とは?処方できる施設は現時点では基幹病院に限られる

ウゴービは誰にでも処方可能な薬剤ではなく、下記の条件を満たした『肥満症』のある方に限り処方が可能です。

高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病のいずれかを有し、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、以下に該当する場合に限る。

  • BMIが27kg/m2以上であり、2つ以上の肥満に関連する健康障害を有する
  • BMIが35kg/m2以上

引用:ノボノルディスクファーマ株式会社|ウゴービ皮下注

なお、上述の『肥満に関連する健康障害』と、は下記を指します。

肥満に関する健康障害

ウゴービの処方に関して、これらの診断を医師から受ける必要があります。

ウゴービが保険適応となる体重の目安

ウゴービ処方の条件は、まず『BMI』が基準となっています。
BMIとは、[体重(kg)]÷[身長(m)]²で計算することが出来る『肥満度の指標』です。
日本肥満学会による肥満度分類は以下の表の通りになっており、BMIが18.5未満は「低体重(やせ)」、18.5以上25未満が「普通体重」、25以上が「肥満」とされます。肥満はさらにその重症度から、肥満(1度)〜肥満(4度)に分類されます。

肥満度分類

BMI(kg/m²)  判定
BMI<18.5 低体重(やせ)
18.5<BMI<25 普通体重
25<BMI<30 肥満(1度)
30<BMI<35 肥満(2度)
35<BMI<40 高度肥満  肥満(3度)
40<BMI  肥満(4度)

※2024年4月現在公表されている情報ではさらに下記の処方条件も満たす必要があります。

ー最大投与期間は68週まで
ー2カ月に1回以上は管理栄養士による栄養指導を受けること。
ー常勤医師が日本循環器学会・日本糖尿病学会・日本内科学会の専門医を有すること。
ー上記学会から教育研修施設として認定された施設であること。

この中で最も厳しい条件は教育研修施設であることです。
教育研修施設に該当するのは多数の専門医師が在籍している地域の大きな総合病院に限られ、入院ベッドを持たない、ほぼ全てのクリニックや診療所は教育研修施設には該当しません。
従って、ウゴービの保険適応となる患者さんはかかりつけ医で基本的な投薬や食事運動指導を受けた後に、ウゴービの使用がやむをえず必要とされる方に限り、総合病院へ紹介という流れになると思われます。

内科専門医としてウゴービはお勧め出来るか?

上述の処方条件に合致する方であれば、費用面で有利な保険診療のもとでウゴービが使用出来るのでお勧め出来ると言えるでしょう。

ただ、上述した処方条件は疾患条件に該当するだけでも非常に厳しく、さらに教育研修施設である地域の大きな総合病院しか処方出来ない件は、単に中等度の肥満症でのダイエット目的でウゴービを使用開始したい方にとってはハードルが高すぎて実質的に使用開始不可能になるものと考えられます。

GLP-1ダイエットの効果をしっかりと把握している内科専門医の当方の見解としては、ウゴービ、オゼンピック、マンジャロ、リベルサスいずれを用いてもダイエット効果は十分に得られます。大切なことは、肥満症治療が必要な時に薬剤が確保出来るかどうかです。

ウゴービはあくまで、肥満症に伴う多数の重篤な病気を有する方のみが対象となる治療薬だとご認識ください。

ウゴービに関するよくある質問

最後にウゴービに関するよくある質問にお答えします。

ウゴービの価格は?

ウゴービの価格(公定薬価)は、薬の量によって5段階に設定されています。

  • 0.25mg  1876円
  • 0.5mg   3201円
  • 1.0mg   5912円
  • 1.7mg   7903円
  • 2.4mg  10740円

ウゴービに副作用はありますか?

ウゴービの重大は副作用としては下記のものがあります。

  • 低血糖症状
  • 急性膵炎
  • 胆嚢炎
  • 胆管炎
  • 黄疸


低血糖症状はウゴービの血糖値低下作用により生じうる副作用です。
(冷汗・動悸・ふるえ・頭痛・めまい・倦怠感など)
急激な腹痛が生じた場合には、急性膵炎や胆嚢炎・胆管炎の可能性があります。急性膵炎の場合は背部痛が出現することがあります。黄疸は主に肝機能障害を背景に肌や眼球が黄色くなる状態です。このような症状が出現した際には、薬剤の使用を中止し医療機関に相談することが必要です。

ウゴービはどこで処方して貰えるのでしょうか?

ウゴービは2024年2月22日に満を持して国内発売されましたが、その処方条件は厳しく、処方可能な医療機関は教育研修病院(多数の専門医師が在籍する地域の大きな総合病院)に限られ、一般的なクリニックや診療所では処方出来ない見込みです。

ウゴービの治療期間目安はどのくらいですか?

ウゴービの最大投与期間は68週までと決められております。それ以前の段階で肥満症に伴う健康障害の改善が得られれば早期終了も可能と思われます。

まとめ

注目の肥満症治療薬『ウゴービ』に関して下記を解説させていただきました。

  • ウゴービの発売日
  • ウゴービの薬効
  • ウゴービと他のGLP-1受容体作動薬との違い
  • ウゴービの処方条件

これまで、肥満症に対する治療薬としてGLP−1受容体作動薬(『マンジャロ』・『オゼンピック』・『リベルサス』など)を用いようとしても糖尿病を有する患者さんでしか保険診療で使用することが出来ず、自費診療で処方してもらうしかありませんでした。

ウゴービの発売により、保険診療での対応が初めて可能となりますが、処方条件が地域の大きな総合病院(基幹病院)に限られるなど非常に厳しい為、入院ベッドを持たない一般的なクリニックや診療所での処方は現在不可能となっています。

GLP-1ダイエットを希望される方は、『マンジャロ』や『オゼンピック』、『リベルサス』を用いてGLP-1ダイエットを開始した方が結果的に早期のダイエット効果が期待出来るものと考えます。

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