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糖尿病で喉が渇くのはなぜか

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はじめに

N O B Uヘルシーライフ内科クリニック院長の藤原信治です。
今回は、糖尿病でのどが渇く理由に関しての解説や私見を述べさせていただきたく思います。

糖尿病で有名な症状に『のどが渇く』という症状があります、『口渇感』と表現されることもあります。

その口渇感を改善させるために糖尿病患者さんは多量の飲水行動をおこすようになり、結果として尿量が増え多尿となります。

このような『口渇』『多飲』『多尿』といった症状は糖尿病の初期ではほとんど現れませんが、糖尿病が進行すると自覚症状として出現するようになります。

そもそも糖尿病になると何故『のどが渇く』のでしょうか?

糖尿病でのどが渇く原因

脱水状態になったときに『のどが渇く』のは正常な反応です。
しかし、糖尿病の方は普段通りの水分量を摂取していても『のどが渇く』ようになります。

糖尿病は体の中の血糖値を下げるホルモンであるインスリンの作用が弱くなったり、インスリンそのものの分泌量が低下するなどの原因で血液中のブドウ糖濃度が高くなる病気です。

血糖値が高い状態が持続すると、腎臓から糖分が溢れ出て尿糖という形で排出されるようになります。尿のブドウ糖濃度は血液よりも高くなることはないため、尿に溢れ出た糖分を溶かす目的で尿量が多くなり、体内の血液から水分が失われてしまいます。その結果として、尿量も回数も増加し、普段通りの水分量を摂取していても脱水症に近い状態となり、『のどが渇く』ようになる訳です。

一般的に尿糖という形で尿に糖分が溢れ出すのは血糖値160~180㎎/dLぐらいからとされています。口渇症状が出るころには、糖尿病予備軍ではなく糖尿病となってしまっている可能性が高くなるため注意が必要です。

 

糖尿病以外でのどが渇く原因

糖尿病でなくても『のどが渇く』症状をもたらす原因や病気は存在します。
頻度として多いものを下記に述べます。

① 脱水症
② シェーグレン症候群
③ 電解質異常
④ 薬の副作用

① 脱水症

多量の発汗、急病などの理由による水分摂取量の低下、熱中症や尿崩症などを背景に脱水症となってしまった場合は『のどが渇く』のは正常な反応です。

② シェーグレン症候群

シェーグレン症候群とは唾液の分泌量が病的に減ることで口の中が渇いてしまう自己免疫性の病気です。シェーグレン症候群では体内に出来る自己抗体が唾液腺や涙腺を異物と判断して攻撃してしまい、結果として唾液や涙の分泌量が減り、口の中が渇いたり目がゴロゴロする症状が出現します。『口の中が渇く』や『目がゴロゴロする』といった症状がある人はシェーグレン症候群の可能性があります。

③ 電解質異常

何らかの事情により低カリウム血症や高カルシウム血症といった電解質異常が持続した場合に、尿の濃縮力障害が生じ多尿・多飲状態となり『のどが渇く』症状が出現します。

④ 薬の副作用

アセチルコリンという神経から分泌される物質の作用が弱まると唾液の分泌量が低下します。『抗コリン薬』とよばれるタイプの薬はアセチルコリンの作用を抑制する働きがあります。抗うつ薬・抗不安薬・パーキンソン病治療薬・排尿障害の治療薬の一部など様々な抗コリン薬があります。このようなお薬の内服をしており、『のどが渇く』症状があり困っている場合は処方した医師にご相談されることをお勧めします。

 

のどが渇くときの対応方法

『のどが渇く』ときの対応方法に関してですが、これは原因によって異なります。

シェーグレン症候群や薬の副作用など唾液の分泌量の問題でのどが渇く場合

原因となるお薬の服用を中止したり、唾液の分泌量を増やす薬を用いることもありますが、キシリトール100%のガムを噛むことも有効だったりします。

 

糖尿病や電解質異常など多尿となることで脱水症状としてのどが渇く場合

身体から出て行ってしまう以上の水分量を摂取しないと症状は改善しません。健常な方において体から出ていく主な水分としては、尿(約1000~1500ml/日)・汗・皮膚や呼気より蒸発する不感蒸泄(約900ml/日)・排便時の水分があり、少なくとも1日に2000ml以上もの水分が体から出ていってしまっています。

日常的に体に入ってくる水分量は、食事から約1000ml/日、体内でエネルギーを代謝する際に発生している水分として約300ml/日があり、これらの合計で約1300ml/日となります。

つまり、健常な方でも体内に入ってくる水分よりも出ていく水分量の方が多い状態にあり、少なくとも最低1000ml/日の水分を摂取する必要がありますし、糖尿病で口が渇くほど多尿である方は増えた尿量に合わせてそれ以上の水分摂取が必要であると言えます。

 

糖尿病による脱水症を予防するために

糖尿病により『のどが渇く』症状がでるほど多尿である場合は、十分量の水分摂取が必要であることを上述しましたが、摂取する水分の種類に関して注意が必要です。

糖質やカロリーの多い飲料を避ける

ジュースなどの所謂清涼飲料水には糖質が多く含まれています。

またスポーツドリンク系の飲料は脱水症・熱中症予防として勧められる事があり、実際に濃度が血液に近いため体内に吸収されやすいという性質はあるものの、濃度調整に糖質が多く使用されており、血糖値が上昇する原因となるため糖尿病や糖尿病予備軍である方にはお勧めできない飲み物になります。
 

コーヒー・紅茶やアルコールには利尿作用がある

コーヒーや紅茶といったカフェインを多く含む飲料やアルコールには利尿作用があり、水分量としてそれらを摂取した量以上の尿が排泄されてしまいます。したがってこれらの飲料の摂取量は水分量としてカウントしてはいけません。
もしコーヒーや紅茶、アルコールを飲む場合はさらに多くの水分摂取が必要となりますが、その摂取する水分の種類に関しては、お水やお茶での摂取が推奨されます。

 

 

『のどの渇く』症状でお困りの方へ

上述したように糖尿病以外の原因でも『のどが渇く』ことはありますが、慢性的に『のどが渇く』症状が続き多飲の傾向がある場合は、糖尿病の可能性が高くなりますので医療機関での検査をお勧めします。

もし糖尿病であった場合やそれ以外の診断結果であったとしても正しい診断を得て適切な治療を開始することが出来ますし、早期発見できれば早期治療に繋がります。

NOBUヘルシーライフ内科クリニックでは糖尿病などの生活習慣病を中心に、内科系全般の病気に関する検査・診断・治療を行っております。
その他、何か体調に関するお困りごとがありましたら遠慮なくご相談ください。

皆さまここまで読んで頂きありがとうございました。

 


院長 藤原 信治

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