足の浮腫み(むくみ)とは?
はじめに
N O B Uヘルシーライフ内科クリニック院長の藤原信治です。
今回は、足の浮腫み(むくみ)に関しての解説や私見を述べさせていただきます。
『足がむくむことがある』とお悩みの方は多いのではないでしょうか?
ほとんどの浮腫み(むくみ)は、朝は大丈夫だったが立ち仕事の後などで夜はむくみが生じたが翌朝には改善しているなどのあくまで一過性のむくみであり、このケースは基本的に病気ではありません。
ただし、浮腫み(むくみ)を指で圧迫した跡がしばらく残るとか、このようなむくみが何日も続くという場合には何らかの病気が原因である可能性が高くなります。
特に急激な体重増加を伴う浮腫み(むくみ)は腎臓病や心臓病などの生命に関わる重篤な病気であることもあり注意が必要です。
そもそも浮腫み(むくみ)とは何なのでしょうか?
浮腫み(むくみ)の定義と腫れとの違い
『浮腫み(むくみ)』とは何らかの原因により、血液中の水分が血管の外の組織へ浸みだすことによって、皮膚や皮膚の下に水分がたまってしまう状態のことを言います。基本的に痛みはなく、皮膚の色にも変化は生じません。
一方で、浮腫み(むくみ)と混同されやすい用語に『腫れ』があります。この『腫れ』とは打撲や感染症などによる炎症を主たる原因として、皮膚など体の一部で血液の量が増加しふくらんでいる状態のことを言います。この腫れは、痛みや熱感や赤みを伴うことがほとんどです。
浮腫み(むくみ)の原因
浮腫み(むくみ)が生じる原因は以下の2つに大別されます。
✓生活習慣により引き起こされる病気でない浮腫み(むくみ)
✓病気により引き起こされる浮腫み(むくみ)
生活習慣により引き起こされる病気ではない浮腫み(むくみ)
生活習慣によって引き起こされる浮腫み(むくみ)には概ね下記の原因が考えられます。
これらの原因の場合は、生活習慣の改善で浮腫み(むくみ)も基本的には解消されます。
ただ浮腫み(むくみ)が持続する場合には病気が原因のむくみが隠れていることもあるので注意が必要です。
※比較的、年齢の経過とともに起こりやすい傾向もあり、中年・高齢者に増えてきます。
食事
過剰な塩分や水分の摂り過ぎ、タンパク質やビタミン、ミネラルの不足により浮腫み(むくみ)が生じることがあります。
長時間の立位(立ち仕事など)
長時間の立ち仕事をした時など、血液が重力の影響で下半身にたまってしまうために浮腫み(むくみ)が生じることがあります。
運動不足・睡眠不足
運動不足や睡眠不足、生活の乱れにより浮腫み(むくみ)が生じることがあります。
ホルモンバランスの変化
女性の場合は、生理や妊娠などの際に生じるホルモンバランスの変化により浮腫み(むくみ)が引き起こされることがあります。
病気により引き起こされる浮腫み(むくみ)
浮腫み(むくみ)が一過性でなく持続する場合、指で押した後に跡が残る場合、体重の急激な増加を伴う浮腫み(むくみ)の場合は病気が原因で引き起こされる浮腫み(むくみ)の可能性を疑うべきで医療機関での検査が必要です。
病気が原因で引き起こされる浮腫み(むくみ)の症状
✓むくみが改善しない
✓むくみを指で押すと凹んだ跡が残る
✓むくみが悪くなる共に体重の急激な増加を認めている
✓むくみ以外に動悸・息切れ・息苦しさ・食欲不振症状も伴っている
浮腫み(むくみ)を引き起こす病気
腎不全
腎機能の低下により尿量が低下し浮腫み(むくみ)が生じます。慢性腎臓病は無症状のまま気付かれず悪化するので、浮腫み(むくみ)が生じている時点で中等度以上の腎機能障害が存在することになります。食欲低下や吐き気、貧血、高血圧を伴うこともあります。
ネフローゼ症候群
尿に多量のタンパク質が漏出してしまうことが元で体内のアルブミン濃度が著しく低下してしまい、全身の浮腫み(むくみ)を生じる病気です。急激な体重増加を伴うことが多いことも特徴で悪化すると後述の心不全を発症します。
心不全
心臓のポンプ機能が低下し血液を全身に十分に送り出せなくなることで全身に浮腫み(むくみ)を生じる病気です。心不全が悪化するとむくみだけでなく動悸や息切れ症状が出現します。
肝硬変
肝硬変とは末期の肝不全のことを言います。肝機能が著しく低下することで体内のアルブミン合成が出来なくなり、アルブミン濃度が著しく低下することで全身の浮腫み(むくみ)が生じます。腹水や黄疸症状を伴うことがあります。
甲状腺機能低下症
慢性甲状腺炎(橋本病)を代表とする甲状腺機能低下症により浮腫み(むくみ)が生じます。月経異常や皮膚の乾燥、徐脈(脈が遅い)、抑うつ症状などを伴うことがあります。
下肢静脈瘤
足の表面近くを流れる静脈が腫れて膨れ上がる病気です。見た目の問題だけでなく浮腫み(むくみ)や足の痛み、皮膚症状、足のだるさなど様々な症状を伴います。
リンパ浮腫
体の中には、動脈と静脈の他に「リンパ管」という管があり「リンパ液」が流れています。何らかの原因でこのリンパ液の流れが悪くなると「リンパ浮腫」と呼ばれる浮腫み(むくみ)が生じます。リンパ浮腫の原因としての多くは、がんの治療において、手術でリンパ節を取り除いたり放射線治療によってリンパ液の流れが停滞することで生じます。リンパ浮腫は、がんの治療を受けた全ての患者さんに生じる訳ではありませんが、一度発症すると治りにくいという特徴があります。
足の浮腫み(むくみ)の検査
問診と身体診察
患者の病歴、生活習慣、現在の症状、発症時期、むくみの程度、関連する症状(痛み、発赤、呼吸困難など)について詳しく質問します。
視診や触診を行い、むくみの分布、硬さ、皮膚の変色、押した後のへこみ具合(圧痕性浮腫の確認)などを評価します。
血液検査
・貧血や感染症の有無を確認します。
・ナトリウム、カリウム、カルシウムなどのバランスを評価します。
・AST、ALT、アルブミン、ビリルビンなどを測定し、肝疾患の有無を確認します。
・クレアチニン、BUN、eGFRを測定し、腎機能を評価します。
尿検査
・尿定性検査:蛋白尿、血尿、糖尿の有無を確認します。
・尿沈渣検査:尿中の細胞や結晶の有無を評価し、腎臓や尿路の状態を確認します。
超音波検査
足のむくみの原因がリンパ浮腫や静脈血栓症(DVT)によるものかどうかを評価します。また、腹部エコーで肝臓や腎臓の状態も確認します。
X線レントゲン検査
胸部X線で心臓の大きさや肺の状態を確認し、心不全や肺水腫の有無を評価します。
浮腫み(むくみ)の予防・改善方法
病気が原因ではない生活習慣が原因で引き起こされる浮腫み(むくみ)に関しては、以下の方法で予防や改善が得られることがあります。
温める
ホットタオル(濡らして絞ったタオルを電子レンジで1分あたためると出来上がります)で浮腫み(むくみ)が生じている部位を温めたり、お風呂では湯船に浸かることで血管を拡張させ血液の流れを良くすることは浮腫み(むくみ)の解消に有効です。またお風呂では水圧によるむくみの改善効果もあります。
マッサージやストレッチ
浮腫み(むくみ)がある部位のマッサージを行ったり、ストレッチを行うことも血液の流れを良くすることで浮腫み(むくみ)の解消に有効です。
足を体より高い位置にする
仰向けに寝て足を壁にかけたり、クッションに乗せたりするなどで足を体より高い位置とすることで、足の血液の流れが良くなり浮腫み(むくみ)の改善が期待出来ます。
食べ物
まず体液貯留作用をもたらし浮腫み(むくみ)悪化の原因となる塩分を摂取しすぎないことが重要です。野菜類(トマトやほうれん草など)、果物類(バナナやメロンなど)、いも類(じゃがいもやさつまいもなど)、豆類(納豆やピーナッツなど)の『カリウムが多い食材』を積極的に食べることは浮腫み(むくみ)の改善に有効です。何故ならカリウムには「利尿作用」があるためです。わかめや昆布など海藻類も非常にカリウムを多く含む食材なのですが、調理方法により塩分も多く含むことが多く注意して食べることが必要です。その他、ビタミンEには塩分を排出する効果があるため、アーモンドやアボガド、カボチャなど『ビタミンEが多い食材』を積極的に食べることも有効です。
病気により引き起こされる浮腫み(むくみ)の治療
浮腫み(むくみ)を引き起こしているそれぞれの病気に対する治療対応が中心となりますが、結局のところ、尿量の低下が浮腫み(むくみ)の背景であることがほとんどであるため、多くの場合に『利尿剤』と呼ばれる薬剤の使用が必要となります。
上述の利尿剤の適切な使用にはそれなりの経験が必要であり、飲み薬の利尿剤であっても
適切に使用出来なければ症状の改善は得られないばかりか専門外の医師による不適切な投与量の処方により、腎機能の悪化(急性腎障害)や脱水症を引き起こすなどむしろ患者さんへの有害事象を発生させてしまうケースが現実的に散見されます(私は病院勤務医時代に腎機能悪化で紹介を引き受けた患者さんが専門外医師による利尿剤の不適切な使用が原因であるケースを多く診療してきました)。
利尿剤の使用経験が豊富な診療科は一般的に『腎臓内科や循環器内科』というのが医師全般の共通認識です。
当クリニックの院長は『腎臓専門医』および『循環器専門医』の両方の専門医資格を保有しており、利尿剤の適応判断や量調整などの使用に関してプロとして適切なケアが可能です。
浮腫み(むくみ)でお悩みの方は当クリニックへご相談ください。病気が原因である可能性も含めて精査させていただきます。
NOBUヘルシーライフ内科クリニックでは生活習慣病を中心に、内科系全般の病気に関する検査・診断・治療を行っております。
何か体調に関するお困りごとがありましたら遠慮なくご相談ください。
皆さまここまで読んでいただきありがとうございました。
院長 藤原 信治