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尿潜血陽性(尿に血が混じっている)と言われたら?

local_offer尿潜血陽性腎臓内科

はじめに

N O B Uヘルシーライフ内科クリニック院長の藤原信治です。
先日は、検尿検査のうち尿タンパクに関して解説させていただきましたが、
今回は尿潜血(にょうせんけつ)について私見も交えて語ります。

健康診断で尿検査を行ったことがある患者さんは多いと思いますが、尿潜血陽性と言われても症状がないということで放置してはいないでしょうか?

尿潜血陽性とは、つまるところ『尿に血液が混じっている』ことが疑われる状態で、必ずしも尿が血液の色に見える訳ではありません。
この尿に血液が混じっている状態は、以下の二つに大別されます。

 

①肉眼的血尿

②顕微的血尿

尿に血液が混じる状態というのは、尿が通る道路、つまり『腎臓~尿管~膀胱にかけてのどこかに何らかの異常がある』から発生する訳です。

健康診断で尿潜血陽性を指摘されるほとんどの方は、肉眼で見てもよく分からない程度の血尿である②顕微鏡的血尿である事が多いです。
いわゆる慢性腎炎と呼ばれる腎臓病の場合はほぼ②顕微鏡的血尿となります。

テステープと呼ばれる試験紙(試験紙法)に尿を付着させて、試験紙の判定が(1+)以上となったときに『尿潜血陽性』と判定します。

肉眼的血尿の原因

肉眼的血尿の原因のほとんどは尿路系の悪性腫瘍(がん)や尿路結石などの泌尿器科で主に扱う病気であり、具体例として下記が挙げられます。稀に腎臓内科で扱う病気である腎炎で肉眼的血尿を生じる場合があります。

①尿路系の悪性腫瘍(膀胱がん・前立腺がん・腎盂尿管がん・腎臓がん)

②尿路結石

③前立腺肥大症

④感染症(膀胱炎・腎盂腎炎)

⑤ナットクラッカー症候群

⑥糸球体疾患(腎炎)

⑦その他(交通事故やスポーツ中の腎臓部の外傷など)

⑧ミオグロビン尿

ナットクラッカー症候群

この病気は生まれつき腎臓につながっている静脈が腸にいく動脈と大動脈の間に挟まれて細くなってしまっている状態を指します。激しい運動の後に血尿が出やすくなる傾向がありますが、病的意義はないため治療の必要はありません。ナットクラッカー症候群の多くは時間の経過とともに側副血行路と呼ばれる血液の別ルートが発達してきますので自然に治ってしまうことがほとんどです。

ミオグロビン尿

ミオグロビン尿とは非常に激しい運動を行った際に崩壊した筋肉からミオグロビンが

排出され血液中に移行し最終的に尿に移行するため褐色尿となるものです。肉眼的血尿様に見えるというだけで正確には肉眼的血尿ではありません。

顕微的血尿の原因

上述の肉眼的血尿の原因となる病気でもまだ早期あるいは軽症の段階では顕微的血尿として発見されることがありますが、腎臓内科として扱う病気としては下記が具体例として挙げられます。

①腎炎(急性腎炎・慢性腎炎)

②多発性のう胞腎やアルポート症候群などの特殊な遺伝性の病気

③その他(薬の副作用など)

 

 

腎炎(急性腎炎・慢性腎炎)

急性腎炎としては、溶連菌感染後急性糸球体腎炎や膠原病(ANCA関連血管炎など)を背景とした急速進行性糸球体腎炎が代表的な病気です。血尿は必発です。

慢性腎炎としては日本人はIgA腎症という病気が最多とされています。IgA腎症は未治療のまま放置すると人工透析や腎移植などの腎代替療法に至ってしまう事も多い難病です。特に若年者の健診で尿潜血陽性と判断された場合はIgA腎症を念頭において検査を進めていくことが必要です。なお、これらの病気は尿潜血だけでなく尿蛋白も陽性となることが多いです。

多発性のう胞腎やアルポート症候群などの特殊な遺伝性の病気

・多発性のう胞腎は腎臓に「のう胞と呼ばれる水がたまった袋」が無数と言えるくらいにたくさんできて腎臓の機能が長年かけてゆっくりと低下していく遺伝性の病気です。腎臓だけでなく肝臓にものう胞を形成する傾向があります。将来的に人工透析など腎代替療法の原因となるばかりか、脳動脈瘤や心臓弁膜症、大腸憩室の合併率が高いとされ、この病気が見つかった場合は脳血管や心臓の検査が必要となります。

・アルポート症候群は腎炎、難聴、目の合併症(円錐水晶体や白内障など)を通なう遺伝性の病気で、特に男性で重篤な症状となり、具体的には男性患者では40歳までに90%が腎不全となり、人工透析や腎移植などの腎代替療法が必要となります。

 

その他(薬の副作用など)

体に合わない薬を多量に使用することで、薬剤性間質性腎炎と呼ばれる急性腎障害を発症してしまうことがあります、原因となった薬を中止することで腎機能が悪くなる前に改善することもあれば、発見が遅れた場合に慢性腎臓病として後遺症が残ってしまうこともあります。

 

では、尿潜血と言われてしまったら次に何をすべきでしょうか?

 

実は、試験紙法によって尿潜血が陽性となっても、実際には尿に血液が混じっていないのに何らかの原因で「偽陽性」となることがあります。逆に尿検査前にドリンクやサプリメントでビタミンCを多く摂取していると、本当は尿に血液が混じっているのに「偽陰性」と判定されることがあるので注意が必要です。

尿潜血陽性と判定された場合、次の検査としては以下の検査を必要に応じて行います。

尿沈渣

「尿中に赤血球が含まれているかどうか顕微鏡で確認する検査」です。

ここで尿中赤血球が確認されることで本当の意味での「血尿」と判断される訳です。

尿細胞診

尿の中には腎盂・尿管・膀胱などの尿路系の剥がれた細胞が含まれており、これを顕微鏡で確認することで尿管がんや膀胱がんなどの悪性の細胞が尿に混じっていないか調べる検査です。

腹部超音波

腎臓や膀胱内にがんや結石などの異常所見がないか確認することが出来る検査ですが、尿管の評価などCT検査の方が情報量で有利なためCT検査を行うべき場合があります。

もしCT検査が必要な場合は、連携医療施設をご紹介させていただきます。

血液検査など

腎炎などの腎臓そのものの病気や腎盂腎炎・膀胱炎などの感染症を疑う場合は、血液検査や尿の細菌培養検査を行ったりもします。

当クリニックは、腎臓内科を専門に標榜している医療機関ですので、

この尿潜血陽性判定後の精査を問題なく行うことが出来ます。

 

 

NOBUヘルシーライフ内科クリニックでは、透析予防を目的に各種の生活習慣病の治療を行なっています。近隣の方だけでなく遠方の方のご相談も承ります。

上述の評価の結果、腎臓に針を刺す検査である「腎生検」などの検査が必要と判断される場合があります。その場合、近隣などの複数の大病院と提携協定を結んでおりご紹介させていただきますので安心してご来院ください。

今後も検査値や病気の解説コラムを継続して載せていくつもりです。
宜しくお願いいたします。

 

院長 藤原 信治

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