橋本病(甲状腺機能低下症)で食べてはいけないもの
橋本病とは
橋本病の症状
橋本病が進行すると、甲状腺の腫れが一般的な症状として現れます。甲状腺ホルモンのレベルが正常であるうちは、目立った症状は見られないことが多いですが、ホルモンが欠乏し始めると体の代謝活動が鈍化し、多くの身体機能に影響を及ぼします。これにより、眠気や記憶障害、抑うつ感、無気力などの精神的な影響が生じることがあります。皮膚の乾燥、脱毛、むくみ、声がかすれるなどの症状も現れます。消化機能の遅れによる便秘や、心臓の機能低下に伴う徐脈も生じます。また、体重の増加、寒さに対する過敏性、疲れやすさも橋本病に関連する一般的な症状です。
橋本病の主な症状
- 首元の腫れ
- 疲労感
- 無気力
- 寒がり
- 身体中の筋肉が硬くなったように感じる
- 睡眠はとれているのに、いつも眠い
- 食事量は変わらないのに体重が増える
- 顔のむくみ
- 便秘気味
- 月経不順、月経過多
橋本病に伴う病気
橋本病が原因で、甲状腺に関する別の他の疾患を引き起こすことがあります。
特に一般的なのは、甲状腺ホルモンが一時的に増加する「無痛性甲状腺炎」であり、これはバセドウ病に似た症状(例えば動悸、過度の発汗、疲れやすさなど)を引き起こしますが、通常は自然に回復し、約1ヶ月で症状がなくなります。
さらに、痛みや発熱を伴う急性増悪(ぞうあく)や、甲状腺が突然腫れ上がるリンパ腫など、橋本病が原因で発生することのある病気もあります。リンパ腫の中には病状が急速に悪化するものもあり、そのような症状が現れた場合は、速やかに医師の診察を受けることが重要です。
橋本病で食べてはいけないものは?
橋本病は自己免疫による甲状腺機能の障害を特徴とする疾患であり、甲状腺ホルモンの生成に必要な成分である「ヨウ素」の摂取が、健康な人と比較して影響を受けやすいとされています。昆布やわかめ、海苔、寒天、昆布エキスなどヨウ素を多く含む食材は、摂取量に注意が必要ですが、一般的に日常生活で摂る量であれば「絶対に避けなければならない食品」はありません。
適切なヨウ素の摂取量について
厚生労働省による「日本人の食事摂取基準」では、ヨウ素の一日推奨摂取量は0.13mg、上限を3mgと定めています。日本人は海藻や魚介類を豊富に含む食文化のおかげで、多くの場合、毎日約1~3mgのヨウ素を摂取しており、通常の食生活で十分なヨウ素が確保されています。
ヨウ素不足のリスクは低いですが、健康のためにと海藻類を過剰に摂取することはヨウ素過剰に繋がります。甲状腺疾患を持つ人は、健康な人よりもヨウ素の過剰摂取による影響を受けやすいため、ヨウ素を積極的に摂取する行為は控えめにすることが望ましいです。
ヨウ素摂取の制限が必要な場合
橋本病患者には通常、特定の食事制限はありませんが、治療の一環としてヨウ素が豊富な食品の摂取を一時的に制限することが求められることがあります。
ヨウ素制限が必要となる状況は以下の通りです
- ヨウ素の過剰摂取が甲状腺機能の低下を引き起こしている場合
- 甲状腺のヨウ素摂取率を調べる検査前
- 甲状腺シンチグラフィー検査前
このような時期に避けるべき食品には、昆布、わかめ、海苔といった海藻類が含まれます。さらに、海藻から作られる寒天や昆布エキスを含む調味料も制限対象となります。薬品においても、ヨウ素を含むうがい薬や風邪薬、複方ヨード・グリセリン(ルゴール液:喉につける塗り薬)の使用を避ける必要があります。
橋本病の治療
甲状腺機能低下症の場合、合成 T4 製剤(チラーヂンS®)を1日に25~50μg服用し始め、1~2ヶ月ごとの甲状腺機能を測定し、甲状腺機能が正常範囲に戻り、症状が改善されるまで徐々に用量を調整します。自覚症状がとれればその量で継続します。ホルモン値が正常になっても症状が続く場合は、他の疾患を検討する必要があります。
甲状腺機能の低下が一時的なものである場合、薬を一時中止してみることも選択肢の一つです。特にヨウ素の過剰摂取が原因で甲状腺機能が低下している場合には、ヨウ素の摂取を控えることで改善が見られることもあります。自覚症状がない場合には、3~6ヶ月間経過観察した後、甲状腺機能低下が持続するかを確認してから治療を開始しても構いません。
治療上の注意点
- 急激な甲状腺ホルモンの大量投与は心臓に過負荷を与える可能性があるため、特に年配者や心疾患を持つ人、甲状腺機能の大幅な低下が見られる人には、最初は低用量から開始し、徐々に増量します。
- 一時的な甲状腺機能低下症が見られる場合、治療の過程で薬剤の量を段階的に減らすことが可能ですが、永続性の甲状腺機能低下症には、適量を継続する必要があります。
- 治療を怠ると代謝機能の低下により血中コレステロール値が上昇し、動脈硬化のリスクが高まります。
- 内服薬の量が過剰になると、心臓や骨への負担が増加するため、定期的な検査を通じて、適切な甲状腺ホルモン薬の内服することが重要です。
治療期間
治療にかかる時間は人それぞれ異なります。人によっては数ヶ月で甲状腺の機能障害が回復し、薬の服用が必要なくなることもありますが、中には一生継続的なホルモン補充を必要とする人もいます。治療の進行中に甲状腺の機能がさらに低下することや、新たな症状が現れることもあるため、治療期間を一律に定めることは難しいです。
甲状腺機能低下症・橋本病と食べ物に関するQ&A