低カルシウム血症の症状、原因、治療について
低カルシウム血症とは
低カルシウム血症(ていカルシウムけっしょう)は、血液中のカルシウム濃度が正常範囲を下回る状態を指します。カルシウムは骨の健康を維持するだけでなく、筋肉の収縮、神経の伝達、血液凝固などの重要な役割を果たしています。血中カルシウム濃度が低下すると、これらの機能に障害が生じ、様々な症状が現れることがあります。
低カルシウム血症の原因
低カルシウム血症の原因は多岐にわたります。主な原因は以下の通りです。
- 腎不全:腎臓がカルシウムの排泄を適切に調整できず、血中カルシウム濃度が低下します。
- ビタミンD欠乏:ビタミンDはカルシウムの吸収を助けるため、不足するとカルシウムの吸収が不十分になります。
- 低マグネシウム血症:マグネシウム不足がカルシウムの代謝に影響し、低カルシウム血症を引き起こすことがあります。
- 副甲状腺機能低下症:副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌が不足すると、カルシウムの血中濃度が低下します。
- 急性膵炎:膵炎によりカルシウムが沈着し、血中カルシウム濃度が低下します。
- 薬剤の影響:特定の薬剤(例:抗てんかん薬、抗菌薬、抗がん剤など)がカルシウム濃度に影響を与えることがあります。
低カルシウム血症の初期症状
低カルシウム血症の初期症状は以下の通りです。
- しびれやチクチク感:特に手足や口の周りで感じられます。
- 筋肉の痙攣:特に顔や手の筋肉が痙攣することがあります。
- 筋力低下:全身の筋力が低下し、疲れやすくなります。
- けいれん:重症の場合、全身けいれんを引き起こすことがあります。
テタニー症状とは
テタニー症状は、低カルシウム血症に関連する筋肉の過剰興奮状態を指します。主な症状は以下の通りです。
- 手足の指が無意識に収縮する
- 両手の指にこわばりを感じる
- 手足の痛み
- 全身がしびれる
- 顔が引きつる
- 手足の先端や口の周りのしびれ感
- まぶたがピクピク動く
低カルシウム血症の基準値
正常な血清カルシウム濃度は、8.5~10.2 mg/dL(ミリグラム・パー・デシリットル)です。低カルシウム血症は、血清カルシウム濃度が8.5 mg/dL未満の場合に診断されます。
低カルシウム血症の検査
低カルシウム血症の診断には、以下のような検査が行われます。
血液検査
血清カルシウム、アルブミン、PTH、ビタミンD、マグネシウム、リンなどの濃度を測定します。
尿検査
尿中のカルシウム排泄量を測定し、腎臓の機能を評価します。
画像検査
必要に応じて、骨密度測定やその他の画像検査を行い、骨の状態やその他の病態を評価します。
低カルシウム血症の治療方法
低カルシウム血症の治療は、原因の特定とカルシウム濃度の正常化を目指します。主な治療法は以下の通りです。
原因疾患の治療
低カルシウム血症の原因となる基礎疾患(例:腎不全、急性膵炎など)を適切に治療します。
カルシウム補充
経口または静脈注射でカルシウムを補充します。
ビタミンD補充
ビタミンD不足が原因の場合、ビタミンDを補充します。
副甲状腺ホルモン(PTH)補充
副甲状腺機能低下症が原因の場合、PTH補充療法を行います。
マグネシウム補充
低マグネシウム血症が原因の場合、マグネシウムを補充します。
食事療法
カルシウムやビタミンDを多く含む食品を摂取することが推奨されます。
低カルシウム血症関する質問(Q&A)
低カルシウム血症を放置するとどうなる?
放置した低カルシウム血症が重症化すると、以下のような合併症が発生する可能性があります。
- テタニー症状:筋肉の痙攣が頻発し、手足や顔の筋肉が収縮します。
- 心血管系の異常:心拍数の異常、不整脈、低血圧などが見られます。
- 骨の脆弱化:骨密度が低下し、骨折のリスクが増加します。
- 神経障害:しびれや感覚異常が生じることがあります。
- 精神的な問題:不安、抑うつ、精神錯乱などの症状が現れます。
テタニーの症状と似た病気は?
テタニーは低カルシウム血症でよく見られますが、低マグネシウム血症やアルカローシスといった疾患でも似た症状が出ることがあります。これらの病態も神経系の過敏性を引き起こすため、筋肉の痙攣などが見られます。
低カルシウム血症の改善にお勧め食べ物は?
低カルシウム血症の改善のために摂取が推奨される食品は以下の通りです
- カルシウムを多く含む食品: 牛乳、ヨーグルト、チーズ、小魚、アーモンド、ブロッコリー、ケールなど。
- ビタミンDを多く含む食品: サケ、サバ、卵黄、シイタケ、ビタミンD強化食品(一部の牛乳やオレンジジュースなど)。
- マグネシウムを多く含む食品: ひよこ豆、アーモンド、ほうれん草、カボチャの種、アボカド。
これらの栄養素は、互いに協力して体内でカルシウムの吸収と利用を助けるため、バランス良く摂取することが重要です。
低カルシウム血症と糖尿病の関連は?
直接的な関係は少ないですが、糖尿病の患者様はビタミンD不足が見られることが多く、腎臓の機能低下が進むことでカルシウムの代謝に影響を及ぼし、低カルシウム血症を引き起こす可能性があります。
低カルシウム血症の患者に推奨される運動はありますか?
低カルシウム血症の患者様は、無理のない範囲での軽い有酸素運動がおすすめです。筋肉の過度な使用はカルシウム代謝を更に悪化させる可能性があるため、医師と相談しながら適切な運動を行うことようにしましょう。
低カルシウム血症の状態が改善された後、再発を防ぐにはどうすれば良いですか?
低カルシウム血症の状態が改善された後、再発を防ぐためには、継続的なカルシウムとビタミンDの摂取が必要になります。
また、定期的な血液検査でカルシウム値を確認し、医師の指導のもとで適切な栄養補助や生活習慣の維持も必要です。
子供でも低カルシウム血症になりますか?
子供でも低カルシウム血症になることがあります。特に新生児や乳幼児の間では、栄養不足や先天的な代謝異常、ビタミンD欠乏症などが原因で発症することがあります。また、急激な成長期においてカルシウムの需要が増加するため、十分なカルシウムが摂取できていない場合にも発症のリスクが高まります。
症状には成長障害、歯の発育不全、神経系の問題などが発生する可能性があります。