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尿タンパク陽性と言われたら?

local_offer尿タンパク腎臓内科

はじめに

N O B Uヘルシーライフ内科クリニック院長の藤原信治です。
今回より時々、検査値や病気に関しての解説や私見を述べさせていただきたく思います。
初回は、尿タンパクについて語ります。

健康診断で尿検査を行ったことがある患者さんは多いと思いますが、尿タンパク陽性と言われても症状がないということで放置してはいないでしょうか?

尿タンパクの検出は例え症状がなくても腎臓の糸球体や尿細管などに何らかの異常が起きていると警告しているサインなのです。
正常な腎臓の場合は、尿タンパクが検出される事はありません。

尿タンパクの原因

尿タンパクが出現する原因は、概ね下記に大別されますが、①の生活習慣病に関連する尿タンパクが圧倒的多数を占めます。

  • ①生活習慣病     :糖尿病・高血圧・脂質異常症・高尿酸血症・肥満症など
  • ②免疫の異常や遺伝性 :ネフローゼ症候群・慢性糸球体腎炎・多発性嚢胞腎・膠原病など
  • ③悪性腫瘍      :尿路上皮がん(膀胱癌など)
  • ④尿路感染症     :膀胱炎や腎盂腎炎など
  • ⑤一過性タンパク尿   :発熱・ストレス・運動後・射精後・月経中
  • ⑥起立性タンパク尿  

⑤や⑥は病気ではありません。⑥は痩せ型の若い人で長時間立っている事が多い方に時折みられますが、「起立性タンパク尿」を疑う場合は、前日の夜に完全に排尿してから就寝し、翌朝の一番目となる早朝尿を調べることで、「早朝尿で尿タンパク陰性」であることが確認できれば、起立性タンパク尿と診断できるため、特に治療の必要性はありません。

①〜④については、血液検査や尿検査を中心に必要に応じてエコーなどの画像検査も施行し原因の特定を行う事が必要です。

尿タンパク量と将来の透析率

皆さんもなんとなくイメージ出来ると思いますが、尿タンパク量が多い程に将来の透析患者となってしまうリスクが高くなります。

 

下の図は、健康診断で尿タンパクの検査を行った住民が、17年後にどれぐらいの割合で人工透析に至ってしまったかを調べた日本の臨床研究結果であり、この結果から

尿タンパクが2+以上の方は、そうでない方と比較して人工透析に至る確率が非常に高い事が分かります。

上記の図表は、日本腎臓学会が発行している【CKD診療ガイド2012】より抜粋しています。

 

現実的には、尿タンパクが±や1+であったとしても、その後に尿タンパクが増加してくるケースも多いため、今は尿タンパクが多くない人であっても油断は出来ませんし、2+以上の方は例え症状が全くなくても非常に注意を要する病状と言えます。

尿タンパクを改善させる方法は?

腎臓は一度機能が落ちてしまうと改善させることは困難ですが、尿タンパクを減らすことが出来れば、その後の腎臓のダメージを減らすことで将来の透析リスクを軽減できる可能性を高めることが出来ます。

具体的には、下記の2つに大別されます。

  • ◎食事療法
  • ◎適度な運動
  • ◎薬物治療

食事療法は塩分制限を中心にタンパク質や野菜・果物などを適切な量で摂取していく事です。よくタンパク質制限やカリウム制限が強調されがちですが、腎機能の状態により摂取の許容量は異なりますし、過度なタンパク質制限は栄養状態の悪化にてフレイルの原因となりうる為、私はむしろほど良い摂取を指導させていただく事が多いです。

運動療法は、筋力トレーニングや有酸素運動を負荷がかかりすぎない程度に行います。
最近では腎臓リハビリテーションと呼ばれています。

薬物療法に関しては、腎機能障害の原因となっている元々の病気により異なりますが、
尿タンパクを減らし腎保護効果を得る目的で、「RAS抑制薬」や「SGLT-2阻害薬」を組み合わせた治療が腎臓を専門とする医師にとっては王道です。

尿タンパクを放置しないで医療機関を受診しましょう

上述した通り、健診などで指摘された尿タンパクを放置していては将来の人工透析に至るリスクは高まりますので医療機関の受診をお勧めします。
では、どこの医療機関でも良いのかというとそうではありません。
健診や多くの医療機関で行っている尿検査は、「定性検査」です。
定性検査とは、(―)・(±)・(1+)・(2+)・(3+)と結果表記する検査です。

この定性検査には欠点があり、尿タンパク量の「濃度」で判定しているため、摂取水分量が不足している状態などで尿が濃くなっている時に検査をすると、例えば本来(―)が(±)となってしまったり、本来(1+)が(2+)に判定されてしまうなどの過大評価が発生してしまいます。

その欠点をなくす方法が、「定量検査」です。

定量検査は、患者さんに1日あたり何グラムの尿タンパクが排出されているか測定することができ、定性検査と異なり濃度の影響を受けにくくより正確な測定評価を得ることが出来ます。

当クリニックは、腎臓内科を専門に標榜している医療機関ですので、この「定量検査」を問題なく行うことが出来ます。

NOBUヘルシーライフ内科クリニックでは、透析予防を目的に各種の生活習慣病の治療を行なっています。近隣の方だけでなく遠方の方のご相談も承ります。

今後も検査値や病気の解説コラムを載せていくつもりです。宜しくお願いいたします。

院長 藤原 信治

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