ツイミーグ(成分名:イメグリミン)に関して

2021年9月16日より日本で発売されたばかりの新薬であり、この薬はミトコンドリアに作用し、インスリン分泌と抵抗性の両方を改善する新しい作用の経口血糖降下薬です。


ミトコンドリアについて


内服薬イメージヒトの体内には、肝臓・腎臓・筋肉・脳などの代謝の活発な細胞に数百〜数千個のミトコンドリアが存在しており、細胞質の約40%を占めています。ミトコンドリアは全身で体重のなんと10%も占めていると言われています。ミトコンドリアはATPという細胞内活動に必須なエネルギーを作り出す非常に重要な器官です。ミトコンドリアの働きが低下すると全身の細胞・臓器の働きが低下してしまい、それが原因で起こる病気を総称して「ミトコンドリア病」と呼びます。ミトコンドリアの機能低下が膵臓のβ細胞に影響し、糖尿病が生じた場合を『ミトコンドリア糖尿病』と呼びます。ミトコンドリア糖尿病患者は、我が国の糖尿病患者の約1%に存在するとされていますが、見逃されているケースが多いと言われています。

ツイミーグの作用

ミトコンドリアへは下記のように作用します

  1. 細胞内のみエネルギー代謝に関わる補酵素「NAD+」を増加させる
  2. 細胞内への活性酸素の発生を抑制する

上記①+②から、膵臓・肝臓・骨格筋に下表のように作用します。

作用機序 薬理作用
膵臓 ■ 血糖依存的なインスリン分泌の促進
■ 膵臓β細胞のアポトーシス抑制・β細胞数の増加
肝臓 ■ 糖新生の抑制
■ 脂肪肝の改善
骨格筋 ■ インスリンシグナルの増強
■ 糖取り込みの促進

以上の作用から
『インスリン分泌・インスリン抵抗性を改善』し血糖値の改善をもたらします!

ツイミーグの利点

  1. インスリン抵抗性改善薬としてはメトホルミンがメジャーな薬剤ですが、メトホルミンには乳酸アシドーシスという時に生命に関わる副作用があり、特に高度腎機能障害患者に発生しやすい為に誰にでも使用可能な薬ではありません。ツイミーグはインスリン抵抗性改善薬でありながら、『乳酸アシドーシスの副作用が生じない』という利点があります。
  2. ツイミーグは日本の臨床試験で単剤でも優位なHbA1cの改善効果を示しただけでなく、GLP-1受容体作動薬を除く既存の全ての糖尿病薬との併用でさらなるHbA1c改善効果を示しています。

  3. ミトコンドリアの機能回復効果から長寿遺伝子SIRT1の活性化をもたらすことで、糖尿病の改善のみならず、筋肉量の増加・肥満の改善・心不全の改善・動脈硬化の改善・神経変性疾患の改善・炎症性腸疾患の改善・慢性閉塞性呼吸器疾患の改善など『健康寿命の延伸』がもたらされる可能性があります。

ツイミーグの注意点

  1. 現時点では腎機能障害のある人には使用しづらい
    ツイミーグは腎臓で排泄される薬剤なので、腎機能が悪い人に使用すると通常よりも血中濃度が上昇してしまいます。腎臓の機能が低下した人(eGFR 45未満)には現段階では使用が認められていません。今後eGFR 15〜45の人への有効性や安全性が調査される予定ですので臨床試験の報告が待たれます。

  2. メトホルミンとの併用では胃腸障害が高率
    臨床試験ではツイミーグはメトホルミンとの併用で有意なHbA1c改善作用が得られたものの、胃腸障害が25.0%の方に出現したという結果が出ており併用の際は慎重な対応が必要となります。
  3. GLP-1受容体作動薬との併用効果が乏しい?
    現時点で報告されている臨床試験ではツイミーグとGLP-1受容体作動薬との併用では有意なHbA1c改善効果が見られないという結果でした。今後の臨床試験での追加報告が待たれるところです。

TOPへ